エンジン組み立ての続きです。

シリンダーはM6ネジの片方がトルク抜けしていたので、ヘリサートを入れて修理します。挿入するヘリサートは先端の長いやつだけが入ります。他の2個は深穴に押し込む際に、ヘリサートを押し付ける目的で挿入時にだけ使用します。

ピストン、チェーンガイド、ベースガスケットなどをセットします。

合わせ面がきれいな場合は、基本的にシートガスケットのみで液体ガスケットは併用しません。但し、深い傷などがある場合は、そこに液体ガスケットを埋め込んだりはします。

ピストンは、内側気筒から挿入しやすいよう、2番3番にスペーサーを入れて高くしておきます。

シリンダー側ベース面はこんな感じ。特に大きなキズなどはありませんでした。

シリンダーを挿入します。

シリンダー挿入後はこちら。1番4番ピストンがほぼ上死点の状態です。ちなみに車両はZ1100-B2ですが、エンジン型式はKZT00JE、シリンダー鋳出し文字も0.998Lとなっており、輸入時から1000ccのエンジンになっていたとのことです。

今回のヘッド面やシリンダー上面の仕上げはオイルストーンまでなので、ヘッドガスケットは小傷などに追従のいい純正品を使います。シリンダーボア周りの金属グロメットは、このように裏表で円形の面と楕円形の面があります。

シリンダースリーブ上側のツバに合うよう、グロメットが円形の方をシリンダー側にして組み付けます。スリーブのツバとシリンダー上面はわずかに段差があったり、隙間があります。金属グロメットが境目をまたがないようにした方が、圧縮漏れに対して有効です。マニュアルには書いてありませんが、純正も同様の組み方になっています。

ガスケット、Oリング5個、カムチェーンガイド、ダウエルピンをセットします。4隅のシリンダースタッド部にもOリングが入りますが、ここのスタッド穴は油圧がかかるオイル通路となるからです。

再チェックでカムホルダーネジのトルク抜けが見つかったので修理します。

もともとヘリサートが入っていたところだったので、更に深いところに2Dの長いヘリサートを挿入します。

ボルトも底付きしない最大長さの物を使います。

ヘリサート修理後、トルクがかかるかチェックします。

ヘッドの準備ができました。デッキ面を脱脂します。

ヘッドを載せます。シリンダースタッドのワッシャーは、4隅の4個だけ純正の銅ワッシャーを使いオイル通路の上側のシールとします。この銅ワッシャーはキズがあるとオイル漏れし易いので、整備時は新品交換をお勧めします。内側の8枚のワッシャーは普通のスチール製平ワッシャーでOKです。

ヘッドを規定トルクで締め付けます。

オイル取出し部、ここもOリングを正しく入れれば液体ガスケットは塗りません。小さい方のOリングは、ケースによっては入れない構造の物もあります。段付きになっていればOリングを入れますが、その場合はネジ穴の奥がメンギャラリーと通じているからです。

オイル取出しブロックを取り付けます。

カムチェーンテンショナーは他車種の部品が混じっていて、ストロークが長い、分解時にバックラッシュが多かったなどの遺留で新品交換します。真ん中にあるキャップは生産終了なのでこれだけは継続使用します。

カムをセットし、テンショナーを取り付けます。

バルブクリアランスを計測します。ほとんどがやや狭めでした。

7ヵ所シムを入れ替えます。

バルブクリアランス調整が終わりました。カムプラグとガスケットをセットします。

ヘッドカバーを取り付けます。

オイルクーラーホースとキャブホルダーを取り付けます。ホースは純正のガイドでインマニ間に保持されます。

この車両はノーマルキャブなので、インシュレーターはそれに合った種類を使います。こちらは16065-1131の方です。内部の抜け止め突起の位置と形状が異なるので、適合したものを使用します。

ステーターコイルの配線のギボシは、焦げているので交換します。

新品交換後はこちら。ここは傷みやすいので定期点検をお勧めします。

スターターのケーブルなどは、垂れ下がってチェーンと干渉しないよう、バッテリーケースなどに固縛しておきます。
