Z1000Mk2 I.H様 エンジンオーバーホール後のオイル漏れ修理

    

昨年2月にエンジンオーバーホールをしたこちらの車両、調子よく4000キロほど走っているとのことで、今回はエンジンオイルとフィルター交換のご依頼です。オーバーホール後の様子も見てみましょう。

 

先ずはエンジンオイル交換です。分割式のマフラーなので、集合部以降を外します。

 

カムプラグのところからはオイルが少し垂れていますね。

 

エキパイを見るとなにやらオイルが垂れています。それも結構な量です。

 

エキパイを外します。オイルの出所はカムチェーントンネルのOリング周りからのようです。

 

ヘッドナットのトルクを確認します。特に異常はありません。急遽、オイル漏れを修理することにしました。

 

ヘッドカバーを外します。カムプラグは純正を使っていますが、オイルが漏れているところは液体ガスケットの接着が剥がれてオイルが滲み出ているようです。これは単純に組み直すしかありません。

 

カムホルダーネジのトルクも確認します。オーバーホール時に全てヘリサート加工してありますが、エキゾースト側の1ヶ所はトルク抜けが再発していました。

 

ヘッドを外します。

  

カムチェーントンネルのOリングは、一部にわずかな挟み込みがありましたが、そこからだけ漏れている感じではなく、広範囲に漏れ始めているようです。Oリングは潰れ代が多く、結構硬化していました。使用していたOリングはPMC製のものです。

  

カムチェーンアイドラーのダンパーも外してみます。こちらはカワサキ純正品を使っていますが、こちらも結構硬化しています。通常、純正部品であれば新品から1年ほどでここまで硬化しないのですが、エンジンの高温環境でもあったのでしょうか。油温計は付けてあり、温度管理はされていたとのことですが、症状はゴムの熱疲労によるオイル漏れが主な感じです。今後も引き続き温度管理に気を付けていただくようお願いしました。ここまではオーナーさん立ち合いで作業を進めたので、エンジン内部が直接見られてよかったとのこと。

 

ヘッドガスケットはPAMSのメタル製を使っています。厚みは攻めずに1.1ミリです。シリンダースタッドのところからのオイル漏れは無いようです。

 

ヘッドの燃焼室側を点検します。特に異常は無く、カーボン堆積も少な目です。

 

タコギヤハウジングは社外製の2本Oリングタイプ。鉄製なのでどこかの社外品です。オーバーホール時にOリングは新品交換していましたが、こちらのOリングも潰れてシール性が悪くなっているようです。

 

カムホルダーネジのトルク抜け箇所をもう一度修理します。前回挿入したヘリサートを取り出します。

 

ヘリサートの間に雌ネジがせん断されたアルミ片が付いています。ヘリサートごとネジ山が上がってきているのです。使用したヘリサートは長さが呼び径の2倍ある2Dタイプです。それでもこのようにトルク抜けすることはあります。

  

今回は未使用ネジ山が残っているネジ穴最深部にヘリサートを挿入するため、更にヘリサートタップで奥までネジ切りします。

 

同じく2Dタイプの長いヘリサートを挿入します。挿入されるのは一番先端のヘリサートのみ。あとのふたつは深穴に挿入するための押しコマとして使用します。

 

ネジ穴最深部にヘリサートを挿入、先端を折って確実に回収します。

 

ボルトはネジ穴の底付近まで届く長い物に交換します。既にほかの2ヵ所も前回長いボルトに交換してありました。

 

トルクがかかるかチェックします。2回確認して問題ありませんでした。カムホルダーネジのトルク抜けは、修理後も再発することがままありますのでご承知置き下さい。

 

メタルのヘッドガスケットは、損傷がない場合数回は再使用可能です。今回は再使用します。

 

ヘッド側はデッキ面のカーボンを落として脱脂して組みます。今回特に分解はしません。

 

エンジンを復元します。きれいに清掃した元のヘッドガスケットと新品のダンパー、Oリングをセットします。

 

シリンダースタッドのところは油圧がかかるオイル通路なので、メタルヘッドガスケット再使用の時は、スタッド穴の周囲上下面に薄く液体ガスケットを塗布しておきます。因みに新規で組む場合は液体ガスケットは特に塗布しません。浅い線キズなどがあれば適宜液体ガスケットを塗ることはあります。

 

ヘッドを取り付けます。

 

カムギヤハウジングのOリングも新品交換します。こちらは汎用のOリングで対応。ゴムの材質は耐油性のあるNBR(ニトリルゴム)の物を選びます。

 

カムとヘッドカバーを取り付けます。

 

当初予定していたオイルとフィルターを交換します。

 

マフラーとキャブを取り付け始動チェックします。このあとしばらく走行チェックしたら完成です。

 

ドライブチェーンは少々サビが発生していました。

 

ツーリングが多いので、雨に降られたこともあるかもしれませんね。

 

チェーンルブをたっぷり塗布し、余分なグリスを清掃します。

 

シールチェーンは予め封入されたグリスで潤滑するので、外からチェーンルブをスプレーしても内部まで達することはあまり期待できません。チェーンルブは錆止めとOリング保護の役目とお考え下さい。

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