エンジン腰下も下ろします。
ケース上からのボルトを外しエンジンを上下反転します。
オイルパンを外します。抜いたオイルにも相当メタリックな粒子が混じっていましたが、オイルパンの底にもスラッジ状のメタリック粒子が堆積しています。
この炭のような黒い汚れは、オーバーホール後約1000キロしか走っていないので経年で溜まったスラッジではなく、摩耗で出たアルミ紛が酸化して黒ずんだものだと思われます。
堆積物をよくみてみます。
細かい一定の大きさのつぶつぶがかなりの量堆積しています。
特に、角の方に多く溜まっています。
ブレーキクリーナーでオイル分だけ流します。
つぶつぶの様子がわかるようになってきました。これを30倍のルーペで見てみると、明らかに透明で、サンドブラストメディアのガラスビーズであることがわかります。
ピックアップのトリガーを外します。位置決めのピンも一緒に取れました。
本来、純正はスプリングピンが使用されており、クランクに圧入されていますが、これは無垢のピンです。
それも、だいぶ小径なので穴の中で遊んでいます。これでは点火タイミングの再現性が難しいですね。
クランクエンドには、こちらもガラスビーズのようなつぶつぶが沢山付いています。
クランクのオイルシールはかなり傾いて入っています。
これでは、早期にオイル漏れが起きるでしょう。
ロアケースには溶接で修理した痕があります。
これは過去の事故修理で、了解済みとのこと。
スターターギヤは手で回すと空転し続けます。消耗したままのダンパーが組み付けられているのでしょう。
シフトシャフトのオイルシールは、リップの一部がめくれて入っていました。
これも早期のオイル漏れにつながります。
ケースの合わせ面にもおかしなところが。
このブローバイのオイルリターン通路には液体ガスケットは塗りません。
この合わせ面のOリングにも、本来液体ガスケットは塗りません。
特にこちらは、はみ出した液体ガスケットの破片がオイル通路を流れた場合、下流に詰まって焼き付きなどのダメージを与えてしまいます。
ミッションはきれいなようです。
でも、こちらのベアリングレースには、中心の穴にOリングが入るはずです。
ですが、Oリングは入っていません。入れ忘れですね。
ジェネレーターローターの締め付けトルクは正常でした。
スタータークラッチの締め付けトルクも正常でした。
ですが、ローターのテーパー面はキズだらけです。
クランクのテーパー面は綺麗です。
ということは、クランクかローターは別のエンジンの物でしょうか。
それにしても、傷ついたローターをオーバーホールでそのまま使用するとは緩む危険大ですね。せっかくきれいなクランクも傷ついてしまいます。
クランクはリビルトしてあるそうで、芯ずれはありません。
振れも極少です。
先ほどのケースの溶接補修痕を内側から見ます。
こちらはほとんど溶接されていませんので、強度的にはだいぶ落ちている模様。
リヤのエンジンマウントにも問題が。
この面は本来平面ですが、だいぶ摩耗してテーパー状になっています。
塗装が乗っているので、オーバーホール前からこの状態でしょう。
相手方のフレームは、S1タイプの補強になっていますが、使われているカラーは純正のラッパ状のものでした。これでは摩耗を止められません。
せっかくS1補強するなら、ここのカラーは削り出しで端面平面が必須です。
定規を当てると摩耗具合がはっきりわかります。
ちなみに、探せばそこが摩耗していないクランクケースは、まだまだあります。
こちらのストック品も状態はいいです。
本来はこのように平面です。ここはリジットマウントなので、平面であることが重要です。
チェンジドラムも摩耗しています。
ここの頂上の平面が狭くなるとギヤ抜けの原因となります。
これはやや摩耗が進んだ状態で、今後ギヤ抜けが発生する手前です。
右が新品部品です。せっかくオーバーホールするなら、ここはぜひとも新品交換しておきたいところです。
クランクケース交換の方向で検討中です。