分解したエンジンを内燃機加工に出すので準備します。今回の仕様はシリンダーボアのボアアップ。現状のノーマルφ69.4ミリからφ76ミリへ拡大し、排気量は1198ccになります。ノーマルシリンダーベースとしては一般的に最大排気量となります。
ボアアップにより、シリンダースリーブも入れ替えて大径化します。そのままではクランクケースに収まらないので、ケース側もボアアップするので、加工に支障となるシリンダースタッドを外します。通常はダブルナットにして回して外しますが、この個体は固着が強いのでなかなか回りません。
そこでナットをスタッドに溶接して回します。
無事にスタッド12本とも外せました。
各面のガスケットもきれいに剥がしておきます。40数年ぶりに分解する部分のガスケットは、カチカチに固着して張り付いているので、本体にキズを付けないよう時間をかけて慎重に剥がしていきます。
ガスケットを剥がし、オイルストーンで面修正、洗浄します。
シリンダーも同様に下準備します。
今回使用するピストンは、PAMS扱いのピスタルレーシング社製Z1000J用φ76ミリです。ピスタルレーシングはイタリアのレーシングピストンメーカーで、2輪から4輪まで広く使われています。市販車用の製品もラインナップしていますが、レーシングエンジン製作用のスペシャル仕様なども個別に対応しているところです。
そのピスタルレーシング社に日本のPAMSがオーダーしたピストンが今回使用するピストンで、超軽量なのが一番の特徴です。ピストンの軽量化は、高回転化に有利に働きます。
ピストントップの盛り上がりを見てもわかる通り、圧縮比もかなり高めの設定です。
真横から見るとこんな感じ。本当はピストンピンから上はもっとコンパクトにしてもっと軽量化できるのですが、ノーマルクランク対応とするためにはこの高さが必要。ピストンピンから下はコンピューター設計を駆使した最新仕様、ピストンピンから上はZ系エンジンに合わせたオーソドックスルな仕様という、新旧のハイブリッド的なピストンです。
裏側はこんな感じ。
無駄な贅肉はどこにもありません。耐久性も私の1000Jレーサーで確認済み。数年間サーキット走行を重ねた後でも、目立った消耗が起きていません。
このあとシリンダーとクランクケースアッパーは井上ボーリングに送り、ケースボーリングとシリンダーのICBM化を施工していただきます。ICBMはアルミスリーブにメッキをしたシリンダーで、通常の鋳鉄スリーブに対して耐摩耗性と軽量化に有利です。先ほども触れた私の1000JレーサーもICBMなのですが、数年レーシング走行をしてもなお、シリンダーの摩耗はほとんど見られないほど耐久性があります。