今回はフォーク単体でのお持ち込みです。スピードショップ・イトウ製スプリングへの交換と同時にオーバーホールを実施します。
お持ち込みのスプリングはレートが0.8kg・mの物のようです。全長が短いためか、白いナイロン製のスペーサーが付属しています。
フォークを分解します。トップキャップは固着しており、外すのに結構難儀しました。ちょっと締め過ぎていたのかもしれませんね。ここの規定トルクは2.5~3.0kg・mなので、サイズの割には小さいトルクです。四角穴を痛めるので、オーバートルクは注意しましょう。
トップキャップを外したところです。現状はこのくらいプリロードがかかっていたことになります。スプリングはノーマルではなくて社外品らしいとのことでした。スペーサーも入っていますね。
下が外したスプリング、上がSSイトウ製のスプリングです。自由長がかなり短くなります。
アクスルクランプ部のスタッドは、傷んでいたので4本とも交換します。
ネジ山が少し上がってきており、口元が盛り上がっていますね。ここもオーバートルクの痕跡ありです。
ネジ穴の口元を面取りします。
タップを立ててネジ穴をさらっておきます。
修正後はこちら。特にネジ山の損傷は無いようです。
インナーチューブを分解するには、このような特殊工具を使います。T字レンチ先端の四角すいで、インナーチューブ内のピストンの回転を押さえます。
特殊工具を挿入します。
四角すいをピストンに強く押しつけながら、ボトムのボルトを緩めます。この際はインパクトレンチが便利です。
ボルトとガスケットが外れました。どちらも新品交換します。
ボトム側面のドレンビスも外します。こちらは樹脂製ガスケットが入っています。同じくどちらも新品交換します。
サークリップとワッシャーを外してからオイルシールを抜き取ります。
分解歴があるので今回は直ぐに取れましたが、数十年ぶりの分解で固着している物の場合、かなり長いバールでやっととれるようなことも。
内部も大きなキズはなく、まだまだ使えるでしょう。
トップキャップのOリングは純正品が販売終了となっているため、代用として汎用品を使います。汎用のOリングは、材質・サイズ共に多くの種類がありますが、バイクに使う場合はゴムの材質に注意が必要です。一般的には、耐油性のあるNBR(ニトリルゴム)製を使用します。
分解・洗浄が終了しました。インナーチューブの曲がりやサビも無く良好です。部品の破損・欠品もありません。
今回は今揃う消耗品全てを交換します。トップキャップのOリング以外は全て純正で揃います。
セッティングはSSイトウさんのマニュアルにもある通り、先ずは純正の仕様とします。油面は441mm狙いです。
油面の測り方は同時代のカワサキ車でも数パターンありますが、Mk2のマニュアルはスプリング無しのフォーク伸び切り状態が条件です。因みに1000Jなどはスプリング無しのフォーク全縮め状態での値となりますね。
フォークを組み立て、新しいスタッドボルトを挿入します。
因みに純正のスタッドボルト生産終了しているため、現在はこちらを使っています。元々はエキパイ部分の部品のようで、Z系、J系のエキパイ部にも使います。スタッドボルトは長さの条件が複雑なためあまり汎用品が無く、メーカー純正品のなかからちょうどいい物を探して使うのが現実的です。これも同一寸法ではなく、若干飛び出しが長くなります。
オイルシールは専用のスライディングハンマーで圧入します。
オイルシールが入ったところ。口元から4ミリほど奥に入ります。
次に平ワッシャーを載せます。サビていることが多いので、ある内は新品交換するといいでしょう。
次に、抜け止めのスナップリングをセットします。こちらも錆びていたら新品交換。
スナップリングをセットした状態。半分くらい溝に隠れます。正しく入っているかは、合口がこのくらい開いていることを確認します。
ダストカバーをはめます。
フォークオイルを規定値より少し多めに入れます。
アウターチューブを上下に動かしてエア抜きします。
油面調整ロッドの長さを441ミリにセットします。
シリンジで吸い上げて、油面を規定値にします。
スプリングを挿入します。
スプリングを入れて上から見るとこんな感じ。だいぶ低い位置ですね。
付属のスペーサーをセットします。
この場合のプリロードは約35ミリです。
トップキャップを締め付けます。プリロードが強い場合はT字レンチ+ラチェットでやると力が入りやすいです。
組み立て完了です。
スタッドとナット・ワッシャーも新しくなって気持ちいいですね。