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Z1000J2 Y.H様 ワークスS1仕様 エンジン1200cc化 シリンダーとピストン組み立て

  

クラッチスプリングは1100ccまでならノーマルでも大抵は事足りますが、1200ccのハイパワーになると伝達トルク不足で滑ります。そこでスプリングを強化します。今回はAREA製の強化スプリングとワッシャー2枚を入れてセット荷重を上げます。

  

ノーマルスプリングを外し、強化スプリングと2ミリのワッシャー2枚追加します。

 

これで腰下は完成。

 

シリンダーを準備します。既存のシリンダーを井上ボーリングでICBMにしました。アルミスリーブに内面メッキ加工したシリンダーで、アルミシリンダ製のシリンダー本体と熱膨張率が同じなので、ヒートサイクルによるダメージが少なく、冷間時のクリアランスも少なくでき、全体重量も軽く、シリンダー内面メッキの耐久性は鋳鉄シリンダーより優れます。公道仕様だと永久保証が付いています。但し、サーキット走行、レース使用した場合は保証の対象外となりますが、私のJレーサーでかなりのサーキット走行実績があり、耐久性は実証済みなのでお勧めです。

  

ICBMは、上下最低面研は標準作業で行われます。スリーブのフランジとデッキ面の境目がほとんどわからないほど連続しています。シリンダー内面のクロスハッチは通常の外観ですが、標準でプラトーホーニングも施工されているので表面の面粗度は慣らし後レベルに仕上がっています。

 

下側はこんな感じ。

 

スリーブがアルミ製なので鋳鉄より肉厚な設定です。このφ76ミリ仕様の場合で肉厚は約3ミリあり、口元の面取りが大きめなので、シリンダーを挿入する際にピストンリングがスムーズに入りやすく組付けやすいです。

 

ボアφ76ミリに対し、スリーブ外径はφ82ミリあります。

 

通常のベースガスケットは内径がφ80と小さいので拡大します。台紙に載せてサークルカッターでケガキます。

 

ガスケット内には繊維質があるのでカッターでそのまま切るのは困難なため、専用のアール付きハサミで切り取り、内径を拡大します。

 

内径は1ミリアップのφ83ミリにしました。

 

シリンダーに載せて合うことを確認します。

 

続いてピストンの準備です。使用するピストンはPAMS監修のピスタル製です。ストリート用としては最大級のビッグボアφ76ミリとする場合、現状ではこの超軽量なピスタルピストン一択だと思います。ワイセコなど他の重量級ピストンと比べ、10000rpm付近でのパワー感やレスポンス、振動の少なさが優れていると思います。

 

元のワイセコφ72ミリピストンと比較するとこんな感じ。

 

スリッパースカートタイプなので前後方向にしかスカートが無く、NCで内部は透かし彫り状態、ピストンピンも最短です。現代の一般的なレーシングピストンの形状をしています。

 

ピストンリングは一般的な3本構成です。下から3本構成のオイルリング、黒っぽいセカンドリング、シルバーのトップリングです。

 

セカンドリングを入れるところ。マークは上に向けて組み付けます。マークの「N」は日本ピストンリグ株式会社製の印。日本製ピストンリングはシェアの上位です。

 

トップリングはこちら。メッキしてあるので通常はシルバーです。

 

リングと内側のスナップリングを入れました。

 

ピストンをコンロッドにセットします。

 

ピストンピンを挿入。

 

外側のスナップリングをセットします。

 

万が一スナップリングを落としてもクランクケース内に落ちないよう、ウエスなどを敷いて作業します。

 

最後にピン径くらいのソケットで押し込みます。

 

スナップリングが確実に溝に収まっていることを確認します。

 

ベースガスケット、チェーンガイド、ダウエルピンなどをセットします。

 

木で作ったピストンガイドを2番と3番のピストン下にセットします。中側2気筒だけ高くしておくためです。

 

シリンダー内面にオイルを塗布します。

 

シリンダーを挿入します。

 

初めに中側2気筒のピストンリング部分まで挿入します。指と爪でリングを押し込みながら、左右交互に少しずつシリンダーを下げていきます。

 

中側2気筒のリングが入りました。

 

続いて外側2気筒のリングを縮めながらシリンダーを左右少しづつ下げます。

 

4気筒のリング部分まで入りました。

 

ピストンガイドを外します。

 

シリンダーをクランクケース面まで下げます。この際、リングが正しく入っていれば、軽くスムーズにシリンダーは降りていきます。もし、少しでも渋い場合はリングの噛み込みなども考えられるので再分解して確認します。

 

シリンダーがクランクケースに密着したら、この状態でレンチで軽くクランキングできるか確認します。その際はカムチェーンを手で引っ張り上げておき、クランクのギヤに噛み込まないようにしておきます。この際のレンチにかかる抵抗はほとんどがピストンリングとシリンダーの摺動抵抗ですが、ICBMの場合は初めから軽く感じますね。プラトーホーニングが効いているのでしょうか。

 

ヘッドガスケットもPAMS製のメタルを使います。ボアはMAXのφ76ミリです。ヘッドガスケットはカムチェーントンネルとボア間の狭いところがビッグボアにした場合の一番弱いところとなります。シリンダースタッドとも距離があり面圧が弱く、強い圧縮圧力に狭い幅で耐えなければなりません。熱的にも熱容量が少ない部分なので厳しいところです。これ以上のビッグボアが困難になる理由がわかると思います。今回、ガスケットの厚みは1.1ミリとしていますが、面研がシリンダー上下とヘッドの3ヶ所施工しているので、圧縮はかなり上がる設定です。

 

ガスケット、Oリング、ダウエルピンなどをセットします。

 

このあとヘッドを準備するので養生しておきます。

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