Z1000LTD K.Y様 異音の点検

 

今年6月にエンジンを全分解してミッションのアウトプットシャフトのベアリングを交換した車両です。その後、走行中に異音とリヤブレーキの振動があるとのことで点検します。リヤホイールを揺するとベアリングにガタがあることが分かりました。

 

4本マフラーでセンタースタンドが無いので、センスタブラケットに木端を当ててリヤをジャッキアップします。

 

アクスルシャフトは左右マフラーに挟まれて抜けないので、スイングアームエンドのT型ブロックを外してシャフト付きでホイールを外します。

 

マフラーをかわしたところでシャフトを抜きます。

 

右側のホイールベアリングはゴリゴリしてかなりガタがあります。

 

左のホイールベアリングは正常、キャリアのベアリングはグリス切れでカラカラします。

 

キャリアと右側用ベアリングは手持ちがあったので交換します。防水性のある接触シール付きタイプを使用します。

 

右のベアリングを抜きます。

 

ホイール側のハウジングは異常ありません。

 

ベアリングは外観は破損していませんが、ゴロゴロしてガタガタです。おそらく水の侵入からサビが発生して摩耗したものと思われます。

 

新しいベアリングを圧入します。

 

キャリアの方もベアリングを交換します。

 

ホイールを復元しますが、トルクロッドとキャリパーは結構ズレているのが気になります。この車両、ベースはLTDで、スイングアームとキャリパー、リヤローターはLTDのまま、リヤホイールはMk2となっています。

 

アクスルナットを規定値で締め付けるとホイールが回りません。外す時ナットが緩かったのでおかしいとは思いましたが。

 

再びホイールを外して点検します。

 

カラーを追加してホイール単体でアクスルシャフトを締めてみます。固くて回りません。

 

シャフトを外してよく見ると、内部のディスタンスカラーがかなり遊んでいます。

 

左のベアリングを外してディスタンスカラーを取り出します。

 

カラーの片側には削られた痕があります。

 

ベアリングの深さと比べると、カラー方が短いことが分かりました。これではプリロード過大でベアリングが固着するわけです。エンジン修理の時にはここまで分解しなかったので気づきませんでした。

 

アルミのカラーを圧入して長さを少し伸ばします。

 

カラーの長さはベアリングの底よりやや高く設定します。

 

ベアリングを圧入します。

 

アクスルシャフトを仮付けしてみます。今度は回るようになりました。ですが、ベアリングをたたいて脱着したため、ベアリングにはボールの圧痕が付いてややゴリ感があります。もう一度ベアリングは新品交換することに。手持ちがもうないので新たに注文します。

 

アクスルシャフトはマフラー内側に少し干渉するので、全長を少し短くします。

 

1.5ミリほど削りました。

 

トルクロッドとキャリパーのズレが気になるので、ホイールアライメントを計測します。結果はホイールセンターが右に7ミリほどズレた状態でした。LTDにMk2ホイールを合わせただけなので、ホイールを右にずらしてつじつまを合わせていたようです。

 

正しくは左側は純正カラーのみ。

 

右側は8.5ミリのスペーサーを入れます。これでホイールセンターとチェーンラインがほぼ合います。

 

ところがキャリパーとトルクロッドは13ミリもずれてしまいました。これを補正するためにホイールセンターを右にずらしてあったようです。

 

安価にオフセットを調整するため、10ミリのジュラルミン板でオフセットアダプターを製作します。

 

アダプターができました。

 

微調整には3ミリと2ミリのワッシャー2枚を使います。

 

アダプターを取り付けます。

 

これでリヤホイールのアライメントは正しくなりました。もともとLTDのリヤホイールは17インチで幅広タイヤです。トルクロッド受けの位置もMk2とは異なり外側に位置します。このあとベアリングが新たに入荷するのを待って再度交換します。