スターターが頻繁に空回りしてエンジン始動できないことがあるとのこと。事前の聞き取りでスタータークラッチの不具合と推測。部品が揃ったので修理します。
ジェネレーターカバーを外していきます。
エンジンスライダーが付いていますが、補助プレートのマウントボルトの片方が左右とも折れ残っているとのこと。こちらも摘出修理します。
使われていたボルトはアルミ製でした。強度が必要なのでここはスチール製がいいでしょう。
スプロケカバーを外します。ジェネレーターハーネスのカバーが切れていました。ここはカバーを取り付ける際に挟み込み易いので要注意ヶ所です。
ジェネレーターカバーを外します。スタータークラッチのボルト緩みやローターボルトの緩みを想定していましたが、その辺りは大丈夫そう。
マグネットローターを外します。
ローターボルトは高強度に変えたいですね。
プーラーでローターを外します。
ローターが外れました。
クランクテーパーは回転キズがあります。キーは無事なので過去に緩んだトラブルがあったようです。
テーパー面はやや傷が多いですね。これでは摩擦力はかなり落ちるでしょう。
スタータークラッチはローラーの圧痕があり、替え時だったようです。ギヤとワンウェイの両方を純正新品に交換します。
ワンウェイ取付のM8ボルトはかなりのトルクで締めるので新品交換します。合わせてマグネットローターの取付ボルトも強度の高いキャップボルトに変更します。
ボルトはロックタイトを塗布して規定トルクで締め付けます。
M8ボルトの標準的なトルクは2kg・mくらいですが、ここはそれでは確実に緩みます。必ず指定のボルト以上でマニュアルのトルク値で締めましょう。ここが緩んでスタータークラッチが空回りしたり、ボルトが折損している車両は結構見かけます。
新しいスターターギヤをセットします。
クランクのテーパーは、凸部分をオイルストーンで修正しておきます。ここはなかなか再研磨するわけにもいかず、修理の場合はクランク交換になるので整備は重要な個所です。
強度アップしたボルトでロックタイトを塗ってトルクを上げて締め付けます。キーが入っていますが周り止めとしては不十分で、キーがせん断されて緩んでいる車両もあるほどです。
チューニングしてエンジンパワーを上げた車両は特に緩みにご注意を。
折れ込みボルトを摘出します。ボルト中心に穴を開け、エキストラクターで取れました。
ジェネレーターカバーにキズがあるのでカバーも交換します。ステーターコイルの配線もかなり硬化していたので合わせて交換します。
カバーとハーネスを新品交換しました。ハーネスは作業性を考えて分割式に変更。
チェンジレバーのボールジョイントにガタがあったので、手持ちの純正ジョイントに交換します。
次に右側の折れ込みボルト摘出です。
エンジンカバーを外して折れ込みボルトの中心に穴を開けます。このネジ穴はクランクケース内に貫通しているので、折れ込みボルトを中に落とすと厄介です。
中心の穴開けを少しづつ進め、折れ込みボルトを内部に落とさずにエキストラクターが食い込んでくれました。
無事に摘出完了です。
エンジンスライダーは廃止し、1000Jの純正マウントボルトを使用して取り付けます。なんとか日帰りで作業終了しました。