ヘッドは、カムホルダーの雌ネジが数ヶ所傷んでいるので修理します。
タコギヤのオイルシールは逆さまですね。
オイルシールを外して新品交換します。
この向きが正解です。
ヘッドを分解します。
1番インテークバルブは、コッター溝辺りでガイドに引っかかるので抜けません。
キズが付いていると思われる個所をオイルストーンで修正します。
バルブが抜けました。
傘の形状から社外品のバルブのようですが、コッター溝がZ1などの前期型タイプの角溝です。
他のバルブも全て角溝です。
ところが、コッターは丸溝と角溝が半数ずつです。
上が角溝用コッター。Z1などのZ系前期型に使われています。
下が丸溝用コッター。Mk2以降、1000Jなどにも使われています。
角溝に角コッターをセットするとこんな感じでフィットします。
角溝に丸溝用コッターを入れると、一応は組めますが当たりが悪そうです。
カムホルダーネジを修理します。
事前にチェックした個所から修理しましたが、ほとんどヘリサート入りなので、
古いヘリサートを取り出すのが一苦労です。
こちらのネジ穴の底には、前回のタングが残されていました。
ヘリサートタップを立てネジ山を修正します。
深いところにヘリサートをセットするので、押し込み用のスリーブなどを重ねてセットします。
スリーブで押し込みながらハンドルを回します。
山飛びするのでハンドルは決して押し込まないこと。
ヘリサートがネジ山に数山掛かかるまでねじ込めました。
その後はハンドル回転のみで更に奥深くまでねじ込みます。
最後に必ずタングを折り取ります。
上の方のネジ山は、ヘリサートごとトルク抜けした際にせん断されているので支えになりません。そこで今回はそれ以上深いところにヘリサートをセットしたわけです。
デッキ面からヘリサート上端までの深さは約14ミリです。
トルクチェックしますが、またもやトルク抜けしました。
ヘリサートを取出し、更に深いところにセットすることに。
現状の下穴深さは約30ミリです。
その下にオイル通路がありますが、もう少し深くできます。
ドリルで下穴を掘り下げます。
約37ミリまで掘りました。
オイル通路までは貫通していません。
再度、ヘリサートタップで奥までネジ切りします。
ヘリサートを最深部にセットし、これでトルクが掛かるようになりました。
ここに使用するボルトは、ノーマルより12ミリほど長いボルトになります。
1番カムホルダーの修理が完成です。
トルクチェックしますが、元々OKだったボルトが2本ともトルク抜けしました。
こちらは既存のヘリサートを取出し、同様に深いところに新しいヘリサートをセットします。
ボルトは4本ともロングとなりました。
ようやく1番カムホルダーの修理が完了です。
続いて2番カムホルダーの修理です。
こちらは対角2ヶ所のネジが要修理。
修理後、ボルトのねじ込み代を確認すると、ノーマルボルトの部分は少し浅いようです。
こちらも4本ロングボルトとしました。
修理後、トルクチェックします。
続いて3番カムホルダーです。こちらは事前のチェックではトルクが掛かりました。でも、ネジ山の掛かりが浅い2本はロングボルトに交換しておきます。
ボルトを長くしたら、早々に底突きしてねじ込めません。既存のヘリサートに問題があるようです。
M6タップを軽くかけてみますが、タップがヘリサートを貫通しないようです。
既存のヘリサートを取り出します。
口元の半周を細いドライバーで起こします。
タングを回すように、起こした部分をラジオペンチでつまみながら逆回転させて取り出します。
ヘリサートが取れました。先端には折れ取れなかったタングが残っています。
これではボルトが引っかかって入りません。
もう1ヶ所も既存のヘリサートを取り出しますが、こちらは更に深いところにあります。
先端を細くとがらせたドライバーをうまく使って、ヘリサートの巻初めの半周を内側に起こします。
更にこじって、直径方向に整えます。
これを挿入工具を使って抜き取ります。
逆回転させて無事取り出せました。こうすればネジ山の損傷は最小限で済みます。
ヘリサートタップでネジ山を修正します。
新しいヘリサートを挿入します。
タングの折り取りは、この「折り取り君」が便利です。
挿入工具で逆回転して折り取るのは、接断面を変形させるのでNGです。
折ったタングは必ず回収し、切断面の変形が無いことを確認します。
トルクチェックし、これで3番カムホルダーも修理完了です。
続いて4番です。こちらは事前のチェックでは4本ともトルクが掛かりましたが、現在はこの3本が既にトルク抜けしています。
ボルトを抜くと、ネジ山がせん断されていました。
ここの3本は、新規にヘリサート加工します。
ボルトも他の部分に揃えてキャップボルト化し、全てややロングに変更します。
これで4番カムホルダーも修理完了です。
ボルト16本、全て長めのキャップボルトに変更となりました。
長さは場所によってまちまちなので、次回の分解時には同じ位置に戻してください。
燃焼室のカーボンを落とします。
リムーバーでふやかしたら、ワイヤーブラシで優しく取り除きます。
洗浄終了です。
バルブもカーボンを落とします。
ステムシールを交換し、バルブを元の位置に戻します。
キャブホルダーは十分に柔軟性があるので継続使用します。
純正のプラスネジだと整備性が悪いですね。
取り付けはキャップボルトに変更します。
角溝用のコッターは、不足分の8個を注文。途中まで組付けておきます。
ピストンも継続使用です。