インナーチューブとステムベアリング交換のご依頼です。ステムベアリングのガタは、前回の作業時に点検して発覚したものです。インナーチューブは現在短いものが付いているので、ノーマルの長さに戻したいというところから。
タンクを外す時に負圧ホースのコック側が裂けていました。このあたりも燃調が変わってしまうので要注意。
フロント周りを外します。
ステムボルトはかなりオーバートルクでした。ここを締め過ぎるとステムベアリングのプリロードにも影響するので要注意です。
ステムを外します。
既にテーパーローラーベアリングに交換されていますが、アウターレースにはローラーの痕が付いていますね。全周に痕が付いている場合は締め過ぎが原因です。ガタがあったので今度は締め過ぎたのでしょうか。
ロアー側も全周に圧痕があります。
ベアリングは交換しますが、テーパーローラーの場合、内側に引っかかりが無いのでレースを抜くのは大変です。よくやるのはボルトを溶接して抜く方法です。
溶接したボルトをたたいてレースを抜き取ります。わずかな力で動くので、とにかく倒さないように交互に少しづつ打ち出していきます。
上下のレースが外れました。
新しいテーパーローラーベアリングを準備します。ステムシャフトもサビを落としておきました。
新しいアウターレースを圧入します。今回は上面は面一となりました。よくテーパーローラーベアリングのアウターレースは、フレーム上面より少し下がったところまで入るので、必ず奥までしっかり入れることが必要です。
下側は過去にノーマルレースを外す際に傾けて無理やり抜いた後がありますね。斜めにえぐれてしまって出っ張りもあります。
出っ張っている部分はスクレッパーで削り取ります。
ほぼ出っ張りは取れました。あまり削ってしまうと緩くなってしまうので要注意。
下側のアウターレースを圧入します。
錆止めにステムパイプの内側にもグリスを塗っておきます。
ロアーステムにベアリングを圧入します。
テーパーローラーにはダストシールが無いので、タンクキャップのパッキンで代用します。
内径、外径ともにピッタリなのでお勧めです。
ステムを取り付けます。ナットの締め付けには注意が必要です。
アッパーステムを仮付けし、ステムボルトを規定トルクで締めた状態でプリロードが適切になるか確認します。ステムボルトの締め付けトルク規定値は4kg・mと小さいので要注意。ガタ無く軽く回ればOKです。(※トルク値訂正しました)
続いてインナーチューブの交換です。使用するインナーチューブはPMC製のMk2用です。
既存のフォークを分解します。
インナーチューブを見比べて、長さ以外に違いが無いか確認します。
新しいインナーチューブに既存の内部パーツを組み込みます。
オイルシールとダストシールは新品交換します。
フォークオイルを規定値とちょっと入れます。
吸い上げて油面を規定値に合わせます。
既存のスラストベアリングを入れようとしましたが、内径が小さくなったので入らなくなったので無しにします。
お持ち込みのイニシャルアジャスターを取り付けます。
インナーチューブ組替完了です。
クラッチレバーのボルトは乾いていたのでグリスアップします。
クラッチケーブルもエンジンオイルを注して潤滑します。
遊びが小さいのでレリーズを調整します。
フォークとステムが組み上がりました。ステアリングは自重で軽く切れてくれるようになりました。これでセルフステアが良く効いて乗りやすくなるでしょう。
コックの負圧ホースは破れた先端を少し切り詰めます。
使われているホースの内径がコックのニップルよりかなり細いので、かなり広げて差し込むコック側は定期的に点検した方がいいでしょう。
タンクバンドもかなり劣化していますね。
こちらも純正新品に交換しておきます。
組み立て後、試運転して完成です。ステアリング周りは正常になりました。フロント車高などは自由にセッティングしてみてください。