エンジン分解の続きです。プーラーでピストンピンを引き抜いて外します。
ピストンはピストンは大きなスカッフも無く、比較的状態はいいですね。
ピストンのメーカーはズバリ、ヨシムラでした。リングはベタ当たりしているので交換したいところ。同じものが今でも手に入るでしょうか。
スタータークラッチはグラグラです。ボルト3本が緩んでいるのでしょう。
ローターボルトは非常に固く締まっており、インパクトレンチでは緩みませんでしたが、柄の長いレンチを使ってようやく緩みました。
スタータークラッチのボルトは全て緩んで飛び出しています。ここの指定トルクは非常に高いので、マニュアル通りに組まないと良く緩むので要注意。
クランクのテーパーはきれいです。
スターターギヤは凸凹が大きいので交換します。
エンジンを反転します。
オイルパンを外します。オイルはかなり汚れていますが、スラッジの堆積は少ないですね。異物も特にないようです。
3カ所あるジャッキポイントにM8のボルトをねじ込んでケースを分離します。カワサキ車、この辺りの整備性のいい設計はいつも感心します。
3本のジャッキボルトを均等に締め込み、上下クランクケースを分離します。
ロアーケースを外します。合わせ面の液体ガスケットの量が純正より多いので、かなり昔でしょうが分解歴があるようです。
クランクのコンロッド小短部に点検棒を通して位相ズレの有無を確認します。
4本目はわずかにズレて点検棒が通りません。このくらいはJ系の通常レベルなので特に問題無いでしょう。
振れは0.03ミリと極小さめ。
各ベアリングもガタ無くスムーズに動きます。クランクは継続使用して問題無いでしょう。
次にヘッドを分解点検します。
ステムエンドはコッターからの出代が十分あるので、大きくはカットされていないようです。
カムチェーンの干渉傷は、ヘッドの方にもありました。
今回はたるんでいなかったので、過去にカムチェーントラブルがあったのでしょう。
バルブスプリングを外します。
16本中10本近くが上下さかさまでした。スキルが無い人が組んだ証拠なので、他にもトラップが無いか要注意なエンジンと分かりました。
正しい向きはこちら。スプリングピッチが密に巻いてある方がヘッド側になります。
ガイドのガタを確認しながらバルブを外します。ガタは8ヶ所とも極小です。
この1本はステムが引っかかって抜けません。コッター溝に傷があると思われるので、オイルストーンで修正してから抜きます。
修正後、抜けました。
分解組立の際に無理してコッターを挟んでしまうと溝周りに傷を付けて盛り上がるので抜けなくなるのです。傷があるまま無理に引き抜くと、ガイドの内側に縦キズを付けるので要注意。
バルブは吸排ともビッグバルブ化されています。
インテークは2ミリ大径の約φ38ミリ。
エキゾースト側も2ミリ大径の約32ミリでした。
ステムオイルシールとバルブシートを外します。
カム周りはハイカムの逃げが大きく削られていますが、現状のカムではここまでの逃げは必要無いので、過去にもっとハイカムが組まれていたのでしょうか。エキゾースト側4ヶ所はリフターホールの縦キズが多いです。ここは修正できない部分です。いままでタペット周りに特に異音も無かったので、このくらいなら温存して使うしかありません。ガイドは磁石が付かないのでノーマルの鋳鉄製ではなくリン青銅系に交換されているようです。
エキゾーストポートはカーボン堆積が多いです。1ポート分軽くかき落としてこのぐらいありました。
バルブシート回りの構造を確認したいので1ヵ所カーボンを落としてみます。ビッグバルブ化に合わせてノーマルバルブシートを拡大してあるようです。バルブシートはカーボン噛み込みも少なく良好です。
Mk2のノーマルバルブと比較してみます。
インテークはこんな感じ。直径2ミリ差といってもこの程度。
エキゾーストはこんな感じ。同じく2ミリ差です。
不具合を予想していたクラッチハウジングのダンパースプリングを点検します。折損はありませんが、2ヵ所はガタが出ています。
スプリング側面の摩耗も進んでいるので折損の危険があります。ハウジングはオーバーホールか別の良品と交換します。
こちらはユルユルの方。クラッチミートする際にジャダーが出ていました。
大方の状態がわかり、予算を考慮しながら今回の修理内容を検討します。ピストンとシリンダーは状態がいいのでこのまま継続使用もアリかもしれません。とりあえずカーボンを落としてから更に詳細に点検します。