オーナーさんが趣味のレストアを断念した一番の原因がこのヘッドです。
エキゾーストスタッドのヘッド側ネジ部が傷んでいる箇所が2ヶ所あります。
1ヶ所は穴が割れて拡大しており、もう一方は溶接修理がずさんな感じです。
溶接で盛るので、盛りやすいように削っていきます。
内部には折れ残っていたスタッドの破片も残っていました。
削り込んだら、奥の方から溶接で盛っていきます
ヘッドが熱で歪まないよう、少しずつ持っていきます。
元のボスの形状ぐらいまで盛れました。
外側を削って整形していきます。
肉が足りない所を更に溶接で盛ります。
再度、整形します。
マフラーフランジをジグにして穴位置を割り出します。
ドリルでネジの下穴を開けます。
他のスタッドの向きを基準に、タップを立てます。
スタッド再生完了です。
続いて、カムホルダーのネジを修理するので、一旦バルブを外します。
エキゾーストバルブは問題無く抜けましたがインテークバルブは抜けません。
コッターが噛みこんだキズで抜けないことはよくあるので、オイルストーンで修正してみます。
結局、削ってもインテーク側は4本とも引っかかって抜けません。
バルブを抜くにはガイドごと抜くしかないので一旦断念します。
バルブフェースはかなり摩耗して変形しています。
今回はコスト優先のため、この辺りの整備は次回に持ち越しです。
再チェックの結果、カムホルダーのネジは13ヵ所トルクが掛かりません。
全てインサートネジで修理されているようですが、ほとんどインサートごと抜けてきています。
ヘリサートで修理しますが、上の方は母材が傷んでいるので、より深いところに設置すべく、下穴を深くします。
外側8ヶ所は貫通し易いので注意します。測ると下まで約35ミリです。
下穴は貫通手前の31ミリ位にとどめておきます。
内側の列は、下にあるオイル通路まで余裕があるので、下穴は35ミリくらいまで開けます。
ヘリサートタップを立てます。
ヘリサートを穴の奥にセットするため、画像のようにコイルのみを押し付けながら回します。ハンドルを押すと山飛びするのでハンドルは回転のみ。
所定の位置にヘリサートをセットしたら、トングを折り取ります。
折ったトングはマグネタイザーで磁化したドライバーで取ります。
穴の底に落ちているトングをくっつけて取ります。
これが残っているとボルトが引っかかったり底突きするので要注意。
外側のボルトはノーマルより5ミリ長くします。
トルクチェックします。
奥のボルトは10ミリ長くします。
こちらも同様にヘリサート加工します。
トルクチェックします。
使用する長いボルトはこんな感じです。
13ヵ所、ヘリサートで修理しました。残り3ヶ所は元のインサートがまだしっかりしているのでそのまま使用します。
修理の加工が終わったので洗浄します。
漏れたオイルに砂がくっつき、ヘッドの狭い隙間は砂で埋まっているので掻き出します。
燃焼室のカーボンもリムーバーを使って落とします。
エキゾーストバルブは用意されていたので交換します。
新しいバルブなので、バルブコンパウンドを付けて擦り合わせします。
ヘッドの修理が完了しました。
ピストンは継続使用します。
カーボンを落とし、ピストンリングは新品交換します。
シリンダー脇のネジも傷んでいたので、左右ともヘリサート加工します。
シリンダーも準備完了です。
腰下に組み込みます。
ピストンをセットします。
シリンダーを挿入します。
ヘッドガスケットなど、消耗品はお持ち込みの純正品です。
ヘッドを取り付けます。