今回入荷した最終ロットのレプリカS1キャリパーの取り扱いについて簡単にご紹介します。ちなみにこのキャリパーの製作に私は関与しておらず、ただ縁あって分けていただいたものです。型が無いので同じものはもう作れないとのこと。基本的に本物と同寸法で作られた精巧なレプリカです。完全一致ではないところもあります。
部品構成はこんな感じです。
左右を連結するブレーキチューブの端はダブルフレアの形状です。加工の都合で内部にこんなコマが入れてあります。
チューブのフレアと駒のテーパー部が接触してシールされます。国産車のブレーキではポピュラーな構造です。
斜め方向のM10穴4ヶ所には全てこのコマを入れてあります。
ピストンシールも特注品だそうです。近似的にカプチーノなどの自動車用のシールが使えます。補修パーツは一切余分には無いので、オーバーホールの際は自動車用を使うことになります。
ピストン径も本物と同じ大口径です。ビッグボアでショートストロークなので、ピストンが出てきた時のピストンの倒れが生じやすい構造です。パッドは1ミリ摩耗したら交換をお勧めします。
パッドピンはベータピンで固定しますが、そのスペースが狭いので市販品のままでは付きません。
ベータピンは先端を短くカットして使います。
したがカットしたもの。サイズはφ4ミリ用です。
カットしたピンはこんな感じで入ります。このベータピンの挿入は、車載状態では非常に難しい作業です。確実に固定しないとパッドの脱落事故に繋がるので、取り付け前に十分練習してください。
パッドはV-MAX用がとりあえず使えます。デイトナだけでも4種類あるので、用途に合わせて選べますね。セットにしているのは一番レース寄りなゴールデンパッドχ(カイ)です。ステンレスローター専用です。
本来、右側のトキコパッドが適合品です。V-MAX用とは若干寸法が異なります。幅が0.6ミリほど広いのです。
トキコパッドは幅約63.5ミリです。
キャリパー側は約64ミリです。
個体差もあるのですが、きつい場合はパッド側面を少し削って使用してください。
合わせボルトの締め付けトルクは4.0kg・mです。
ワイヤリング用の穴も開いています。
ブレーキチューブのフレアナット周辺は狭いので、フレアナットレンチは外径を削って小さくしたもので締め付けます。
もう一度パッドピンの固定の様子です。ベータピンはこの向きしか入りません。
ホイールにもよりますが、パッドが付いたまでは車両のローターへの脱着が行いえない場合が多いです。キャリパーの脱着はパッドを外してやるのが基本です。
トキコパッドとV-MAX用パッドの違いはもう一つあります。摩材の大きさが異なり、V-MAX用の方が半径方向でやや小さくなります。摩材をローター外周に合わせる場合、キャリパーを少し外側にする必要があるので、パッドによってサポートの設計が変わってくるので注意してください。
以上、使用上の注意点をまとめてみました。きちんとセットアップしてあれば、レーシングパーツとして十分に性能を発揮してくれるでしょう。