ヘッドを分解点検します。
カムメタルは広範囲に渡ってかなり摩耗しています。付いていたヨシムラST-L1カムのジャーナルの方はそれほどの傷はありませんが、見た感じ異物によるものというより油膜切れによる焼き付きと思われます。
外したリフターはこちら。上下の摩耗がかなり進んでいますね。シムも2ミリ近いかなり薄いものが使われています。
ステムエンドの出っ張りもかなり少なめ。ステムエンドカットが行われているようです。バルブシートカットがかなりされているようで、これ以上はカットできないでしょう。必要ならシートリング交換となります。
バルブ類が外れました。
バルブスプリングは不等ピッチなので純正のようです。ですがこのようにスプリングの上下が逆の箇所が多数あります。×印の箇所がさかさまにはいっていたところ。
不等ピッチの様子はよく見ればすぐにわかります。不等ピッチのスプリングは、高回転での共振を減らす狙いで設計されますが、重量のある密巻の方を移動量の少ないヘッド側に向けなければ逆効果です。これは整備の基本です。
リフターホールにも問題があります。数か所でこのように摩耗が進んでいます。カムメタルの摩耗が激しいところと一致しているので、摩耗粉が入り込んで傷を付け、摩耗を促進したものと思われます。外れたシムを噛み込んだ痕もありますね。
燃焼室のカーボン堆積は少な目です。ガイドのガタは許容範囲内。
カーボンを落とします。燃焼室のドームは鋳肌のままです。おそらく後期のポリスヘッドと思われます。横から見てオイル通路のプラグが黒いので、あとから塗装したものと分かります。ヘッドは交換されているようです。
ポート研磨してあります。
いろいろ手が入ったヘッドですが、ヘッドカバーネジ部の欠損、過大なシートカット、リフターホールの異常摩耗などにより、このヘッドも交換することに。幸いに、オーナーさんは新品ヘッドをお持ちのようで、そちらを使用します。
続いて塗装が必要な部品の先行準備です。ヘッドライトケースはワーク車同様に半割れにします。先ずはケガキます。
半分弱のところでカットします。
切断面を整えます。
ついていたS1タイプのパルシングカバーです。よりS1っぽくなるよう、エッジを丸めます。
本物同様に穴を2個追加します。
続いてトップブリッジ。お持ち込みのR1用は、ステムの穴が削られており、シャフトに対してフィットしません。そこで手持ちの左側のステムを用意しました。
こちらがお持ち込みのステム。シャフト穴が凸凹しており、シャフトにはめてもグラグラします。クランプで締め付けても、位置の精度が出ないと思われます。
こちらが手持ちから選んだ程度のいいもの。傷も無くシャフトにフィットします。
タンク上げしているのでタンクとの干渉を確認します。
クリアランスが狭いので、少し削っておきます。
左右とも、ハンドルクランプの下辺りを少し削ってタンクの逃げを作っておきます。
これで塗装品の準備ができました。エンジンは主にセラコートで仕上げます。要所はポリッシュ仕上げします。
加工した新品マフラーもセラコートします。スチール製なので元の塗装だと1年くらいでサビてきます。セラコートすれば数年はサビが出にくくきれいな状態を保てます。
そして先日準備したフレームも。塗装の仕上がりまでは3~4ヵ月かかるでしょう。