アイドリング不安定とトルク不足などの問題があるので調査します。
いままでの不具合症状の経緯から、原因となる部分の絞り込みをします。先ずはキャブを交換してキャブかどうか切り分けします。
チェック用のCRキャブを取り付けます。
エンジン始動してみますが、アイドリングでの酷い振動は変わらず発生しています。回転の不安定も同様です。キャブは関係ないようです。
3気筒っぽい感じがするので、エキパイの温度を計測します。1番は200℃ちょっと。
2番は120℃ほどと低めですね。
3番4番は1番と同様の200℃超え。
どうやら2番がきちんと燃焼していないようです。
スパークプラグを外してみます。右から1番~4番です。1・2・3番の電極ギャップは2ミリ以上とかなり広げてありますね。標準は約0.7ミリ、ウオタニSP2の指定は1.4ミリ。弊社ではウオタニSP2でも特段の場合を除いて標準ギャップで取り付けします。キャブセッティングが正しければ、ギャップの差が体感できないので管理しやすい標準ギャップとしています。
プラグを新品交換してみましたが変化なし。2番と3番のプラグコードを入れ替えても、2番は120℃ほどと変化なしです。
エンジンが温まったところでコンプレッションを計測します。スロットルは全開で固定しておきます。
1番から計測します。10kg/cm2をやや超えますね。正常です。
2番を計測します。こちらは2kg/cm2しかありません。バルブクリアランスが狭くて、バルブが閉まりきっていないか、バルブが曲がっているのかもしれません。
3番4番のコンプレッションは10程度で問題無し。ヘッドカバーを開けてバルブタイミングを確認しますが、こちらも問題無し。
バルブクリアランスを計測します。1番と2番のエキゾーストはクリアランスゼロで、インテークが過大です。もしかしたらシムが入違っているのでは?
カムホルダーネジのトルクはOKです。
バルブクリアランスを適正に調整してエンジンを始動してみます。やはりインテークとエキゾーストのシムを入れ替えると規定値になりました。
エンジンは冷えてきましたが、2番のコンプレッションも7以上まで回復しました。
元のキャブでエンジンを始動します。アイドリングは安定し、ピックアップも鋭くなりました。正常に戻ったようです。
今回より先にオーナさんが不具合調査のためにヘッドまで分解しています。その際シリンダースタッドが緩んで抜き差ししたそうなので、スタッドの根元にあったであろうゴミをネジ穴に落としたことが考えられるので、シリンダーまで外して組み直します。
今回もこのスタッドはネットと一緒に周って抜けてきました。
ヘッドを外します。
スタッド根元のゴミを掃除機で吸い取ります。
スタッドの穴にもゴミが落ちていました。スタッドは前回のクランクケース交換の際に新品交換していました。
デッキ面のガスケットを剥がします。
ピストンをよくみると、インテークバルブがピストンと干渉したようで、リセスにスタンプがありますね。4気筒共です。オーバーレブなどしたのでしょうか。
シリンダーも点検します。4気筒ともスカッフがあり、1番はかなり深いですね。
1番を拡大するとこんな感じ。爪に引っかかるのでかなりの深さです。マフラーから少し白煙がでていたのは、これが主原因かもしれません。シリンダーボーリングとオーバーサイズピストン化もメニューに加えます。