今回はエンジン不調の修理とステム交換、リヤショックのレイダウンなどのご依頼です。
先ずは、エンジン不調の現状確認のためチェック走行します。不調の内容はアイドリングが不安定で、時たま回転が上がってしまうとのことで、回転の落ちも悪いことがあるとのこと。
チェック走行の間、終始エンジンはバラツキ、アイドリングも不安定です。よく見るとスロットルケーブル受けのナットが外れています。これも不安定になる一因でしょう。マフラーからの白煙も多く、総合してキャブのスロー系統のセッティング不良か、エンジン内部に何か問題があるかもしれません。
チェック走行中、エンジンに外にも気になる点が。リヤ周りがグラつき、スロットルのオンとオフで挙動が変わり、スイングアーム周りからかなりの振動がありました。停止してリヤホイールをゆするとグラグラします。
スイングアームピボットに異常があるようなので、先ずはスイングアームを分解点検します。合わせてレイダウン加工も行います。現状はボルトオンのレイダウンキットでショックを寝かせている状態で、今度はこちらのレイダウン用ピンをフレームに溶接します。
リヤホイールを外します。
スイングアーム単体でゆすると、ガタのひどさがわかります。スラスト方向に1ミリほど動くのと、ピボットシャフトが締まっていないようで、横から見てもシャフトがグラグラしています。
その動画がこちら。
そのあと、ピボットシャフトを締め付けてみると、スイングアームは固着して動かなくなってしまいます。内部のディスタンスカラーの長さが足りないようです。続いてリヤショックを外します。アッパーマウントにグリスが塗ってありますが、ここは回転する部分ではないのでグリスは不要です。回転するなら軸の長さが長すぎて、内輪を締め付けできていないことになります。
レイダウンキットを外した後は、カラーを作って挿入し、タンデムグリップは再度取り付けます。
スイングアームを外します。
ピボットは左右にキャップが付いている構造です。
ピボットの端面をよく見ると、スイングアーム本体よりベアリングの方が出っ張っていますね。それに加え、中心のカラーが短いので引っ込んでいます。これでは締め付けると固定されてしまうわけです。
サイドのカラー内側には、ベアリングが擦れた跡がありますね。このあとベアリングを圧入してみますが、ほとんど位置は変わりませんでした。対策として、このサイドのカラー内側を段付き形状に削ることにします。
中心部のカラーが当たるところは残し、その外側のみ0.4ミリ削ります。
左右とも段付き形状になりました。これでディスタンスカラーの長さが足りない分を補うわけです。
サイドキャップを付けてピボット部分をプレスで挟んでみます。スムーズに動くのでこれで大丈夫でしょう。
続いてレイダウン加工です。今回はモリワキ位置に設定します。
フレームに穴を開け、ピンを差し込みます。
内外ともに溶接します。
内側はこんな感じ。
刷毛で塗装します。
塗装後はこちら。
スイングアームを取り付け、ピボットを規定値で締め付けます。今度はスムーズに動くようになりました。サイドのガタもありません。
リヤホイールを取り付け、3軸が直線になるまでスイングアームを持ち上げます。チェーンの張りは大丈夫です。
ホイールを持ち上げると、タイヤとウインカーステーの内側がかなり干渉します。ワイドタイヤにしたときは、何らかの対策が必要です。
この状態でリヤショックの長さは約300ミリです。フルボトムではあと15ミリ上がるので、タイヤバーストの危険もあります。このスイングアームはリヤショック受けの位置が後ろ寄りで、車高が上がらないようにできています。このスイングアームを使う場合はかなり長いリヤショックにする必要がありそうです。又は、サス受けの位置を前寄りに移設してもいいかもしれません。
リヤショックを取り付けます。取り付けスパンは265ミリあります。将来のスイングアーム交換を想定し、マウントピンは5ミリ長く設定しました。5ミリのカラーを内側にすれば、オフセットを変更できます。
現状は、スイングアーム側に合わせてショックスパンは狭い方にします。
スイングアーム側の受けはノーマルスパンの250ミリと5ミリオフセットの260ミリに対応するようで、上側に合わせて広くなる方で取り付けます。
この状態でリヤショック全長は345ミリあり、ストロークはバンプタッチまでで60ミリあります。よって、フルボトムするとタイヤとウインカーステーは完全に干渉します。何らかの対策が必要です。