今回は、以前から懸案だったヘッドのオイル漏れ修理と、イメージチェンジのための足回りカスタムなどのご依頼です。
ヘッドのオイル漏れは1番排気ポートから。
結構な量のオイルが漏れていて、マフラー内にもオイルが入り、始動時に白煙が出るとこのと。この機会に修理します。
ヘッドを外します。エンジンは入手時からφ75ミリピストンの1166ccステージ1カム仕様です。
ヘッドを点検します。
1番の燃焼室です。エキゾーストバルブ周辺がオイルで濡れていますね。
2番はこんな感じ。
3番はこんな感じ。
4番はインテークバルブ周辺にオイルが付いています。
1番のエキゾーストポートです。ステムのガタはそれほど多くありませんが、ガイドの付け根辺りもオイルでかなり濡れているので、ガイドとヘッドの隙間からオイル下がりしているようです。
2番はこちら。特に異常無し。
3番はこちら。ガイドとヘッドの隙間からオイル下がりしていますね。
4番はこちら。特に問題無し。
シリンダーも外します。ピストンの状態はいいようです。
シリンダーの状態もいいようです。
一番問題なのはこちら。エキゾースト1番2番のリフターホールに無数の傷があります。ステムシールも破損しています。
外したステムシールはこちらで、手前側がエキゾースト。他車流用の金属環タイプが使われています。リップの部分が破損し、3番4番は完全にちぎれてなくなっています。
スプリングシートも摩耗が進んでいます。
摩耗量は0.5ミリ以上はあるでしょうか。
リフターホールをよくみてみます。ステムシールの破損とこの傷は直接関係ないと思われます。エキゾースト1番はこちら。
エキゾースト2番はこちら。
エキゾースト3番はこちら。
エキゾースト4番はこちら。
バルブを外したヘッド。1番はこちら。
2番はこちら。
3番はこちら。
4番はこちら。
ガイド交換費用やリフターホールの傷を勘案し、現在復刻されているZ1の新品ヘッドへの交換をご提案。バルブ周りの更新も合わせると総額30万円ほどかかりますが、貴重な新品ヘッドがあるうちにとのことで、交換が決定しました。このヘッドはウチのストックでしたが、今日現在Z1の黒ヘッドはメーカー欠品中です。シルバーは購入できるようです。
Z1の新品ヘッドとMk2ヘッドを比較します。燃焼室周りはほぼ同じ。
カム側の内部もほぼ同じ。Mk2にある2次空気導入装置のポートは、Z1ヘッドにはありません。
前後ポート周りもほぼ同じ。
一番異なるのはフィンの厚さでしょうか。当時物は厚く、復刻品は薄くできています。メーカーの説明によると、当時は設計通りの厚さで鋳造することができなかったそう。復刻品は当時の設計者の狙い通りの厚さになっているとのこと。こちらが理想的な姿のようです。
角ヘッドと丸ヘッドの違いが気になると思いますが、丸ヘッドに角カバーを載せるとこんな感じです。
先ほどの2次空気導入装置のところは、ヘッドカバーがこのようにはみ出してしましますが、ガスケットでのシールに問題は無いので使用可能です。
念のため、既存のヨシムラST-1カムを乗せて干渉が無いことを確認します。両方とも大丈夫です。
タコポートプラグは元のヘッドから移植しましょう。オイル漏れするのか、液体ガスケットが多量に塗られています。
Oリングは硬化して機能していないようです。こちらは汎用の耐油性Oリングで代用します。
今回、ステムはザッパーに交換します。手持ちの中からいいものを選び、アンダークランプはワークス車同様にWクランプにするので、左端のFX1純正を切って溶接して作ります。
リフターホールの傷について、いつごろからあったのか過去の画像で確かめてみます。こちらは初めて弊社に入庫した2017年当時の様子です。
車両入手前のエンジンの整備履歴があまりわからないとのことで、カム周りの点検をお勧めして実施することに。
このころから少し白煙があったようで、1番エキゾーストポートは少し湿った感じでした。
カムホルダーネジのトルクが抜けている個所がいくつかあったので、ヘリサートで修理しました。
こちらは1番エキゾーストのリフターを外してシム調整するシーン。よくみると、リフターホールの傷が確認できますね。この時、カム周りに異物は無かったので、現在確認できる傷はこれ以前に付いたようです。