南アフリカ製S1レプリカキャリパーの分解調査

  

 

去年の暮れに友人から小包が届きました。これが噂の南アフリカ製S1キャリパーです。テストの為お借りしました。

 

内容はパッド無しのキャリパー3個。前後使うとして1台分です。

 

パッドはV-MAX用が寸法的には合います。これはS1キャリパーと同じですね。画像のゴールドのものはいつも使用しているデイトナゴールデンです。

 

パッドピンは異なりまsう。左がS1、右が南ア製で少し短くて段がありません。

 

S1のパッドピンは直径約4.5ミリです。

 

南ア製は約5ミリです。

 

こちらのパッドはS1キャリパー用のトキコパッド本物です。ピンはきつくて入りません。デイトナゴールデンにも同様に入りません。

 

パッドの穴は約5ミリなので、ほぼ同じ径でですね。少し余裕がないと抜き差ししにくいので5ミリのドリルで揉んでわずかに拡大します。

 

仕上げに棒ヤスリで長穴にします。

 

これで5ミリのパッドピンが通るようになりました。

 

パッドピンの端面は面取りが少なくほぼ直角で差し込み難いので、面取りを大きくしておきます。

 

上2本が面取り拡大後です。

 

パッドピンのクリップ穴も、片側に面取りが無いので追加します。

 

面取り後はこちら。両面とも面取りは大きくしておきます。

 

旋盤で回しながらバリ取りします。

 

これでやっとパッドピンが組めました。パッドピン端面に段付きが無いので、ベータピン挟まれた状態で抜け止めもされています。そのベータピンのポケットが小さいので、外側のピストンは最後まで戻りません。

 

こちらはS1キャリパー。ベータピンが入るポケットがしっかりあるので、パッドは奥まで戻すことが可能です。

 

その他もS1キャリパーとの違いがあります。ブレーキチューブのナットは、二面幅が11ミリです。S1は10ミリです。

 

ブリーダーも二面幅がS1は10ミリで南ア製は8ミリです。

 

ブラインドプラグの二面幅はS1と同じ10ミリです。

  

ブリーダーのネジは、左のS1がM8×P1.00で、南ア製はM8×P1.25です。

 

連結ボルトはS1と同じM10×P1.25 二面幅14ミリでS1と同じ。ソケットはスナップオンなどの薄型なら入ります。

 

ボルト自体は削り出しのフランジボルト、ステンレス製のようです。S1は普通のクロモリ六角頭のユニクロメッキでワッシャー無し、ワイヤリング穴付きです。

  

キャリパーを分解します。

 

ブレーキチューブ先端の処理はコンベックス(SAE)タイプのようアメリカに多い規格です。S1はダブルフレアで日本車に多い規格です。日本のトキコ製ですからね。

 

こちらがブレーキチューブのフレアを作る機械です。

 

ダブルフレアとはこんな形状です。これに対するようネジ穴の奥には逆フレアのピースが埋め込まれています。

 

ピストンを外します。ピストンサイズはS1と同じようです。

 

決定的に違う点がこちら。ピストンのシールリングが〇断面のOリングとなっています。

 

過去、生産車やレーシングカーの設計や製作・整備に長く携わってきましたが、ピストンシールに〇断面のOリングを使用した例は見たことがありません。

 

シール溝も底面が平の単純なコの字形状に見えます。

 

通常のキャリパーはこちら。S1に限らず生産車やロッキード、ブレンボなどほぼ全てのブレーキで角断面のシールが使われています。溝の底が斜めになっており、入り口側が大径、奥が小径となっており、シールを溝にはめるとシールの奥側内径が小さくなります。この構造がピストンを戻す設計になっています。

 

角断面のピストンシールはこちら。これが〇断面のOリングで機能するのでしょうか。

 

マスターをつなげてフルードを入れてエア抜きします。

 

ブリーダーやブレーキパイプナットからフルードが滲んできました。

 

ブリーダーは一旦外して先端テーパーを滑らかに研磨してみます。

 

研磨後はこちら。

 

チューブナットは増し締めでフルード漏れは止まりました。ブリーダーも漏れ無しです。レバーを握った感触はS1キャリパーとほぼ同じ。ピストンも液圧解放と同時にきれいに戻ります。キャリパーの開きは目視でも確認できるほどありますが、計測すると0.05ミリくらいなのでS1と同等です。輪ゴムでレバーを縛り、1時間ほど圧をかけてみましたが漏れはありませんでした。

 

次は実車に付けてテストしたいと思います。