キャブのリセッティングとその他全体点検のご依頼です。
取り付けられているバックステップは、過去に弊社が単体販売し、先方のバイクショップさんで取り付けされたものです。
今はオーナーさんも新しくなり、さらにカスタムが進行中です。
現在のキャブはCR35です。
今までのセッティングはオーナーさん自ら行ってきたとのことですが、
なかなかうまく決まらないとのことで、弊社へリセッティングをご依頼になりました。
簡単な試運転のあと、キャブを外して現在のセッティングを確認します。
エアスクリューが3/4回転戻しとなっているので、スロージェットがかなり小さめのようです。現在#62でしたので、2段階上げの#68にしてみます。
エアスクリューは、1と1/2回転戻し辺りを中心にセッティングが出せると扱いやすい仕様となります。
メインジェットは現在#130。とりあえずはこのままで。
フロート高さも揃っています。
続いてニードル関係を確認します。
2番キャブのニードルストッパーが戻されていませんでした。
あとで伺ったら、戻し忘れとのこと。
この状態で走ると、ニードルが共振で上下するので燃調が狂います。
先ほどの試運転でも、全開時にバラツクなどの症状が出ていました。
現在のニードルは#5177。根本径がφ2.775ミリのこのニードルです。
社外のアイドルアジャスターが付いていますが、膝に当たるのでこちらのビトー製アジャスターに変更します。
ダイヤルのセットはタイラップなどで任意の位置へ。
この位置だと、使わないときは奥に押し込んでおけば目立ちません。
スロットルバルブの高さのばらつきを目視で確認します。
ほぼそろっているもよう。
スロットルケーブルのアジャスターが不自然な位置だったので、スロットルを開けて確認します。
タイコの掛ける位置はこのケーブルには適していないようです。
インナーケーブルが長めなこのケーブルの場合、タイコはなるべく中心に寄せて引き代を多く取ったほうがいいでしょう。
キャブを取り付けてケーブルの遊びを調整します。
グリップ擦れてフリクションを感じるので、擦れる部分にシリコングリスを塗布します。
グリップエンド側も、ゴムが擦れる部分にグリスアップしておきます。
続いてクラッチケーブルの見直しです。
現在はルートが適当ではなく、きつい曲がりが発生しています。
ダウンチューブ辺りの通し方が適切でないので、上の方でケーブルが余り、ライトケース裏で迂回して付いています。
タイコの部分を外してみると、タイコの樹脂スライダーが割れていました。交換時期です。こちらのケーブルは社外品でした。
スプロケカバーを外し、ケーブルを交換します。
新しく取り付けるのは純正新品です。コンチハンドルの場合はZ750GP純正品が一般的です。
インナーケーブルにはエンジンオイルを10滴ほど上から浸透させておきます。
タイコには個体潤滑性能のある樹脂ブッシュが装着されています。
ドライブスプロケットのボルトは高強度ボルトに変更されています。
ロックワッシャーに苦労のあとが伺えます。
シフトシャフトに前後方向のガタがあったので軸受をよく見ると、
真鍮色のブッシュが挿入されています。
純正はアルミの母材のままですが、過去に修理されたものでしょうか。
現在は再び摩耗が進んでいるようです。
前側のダウエルピンの穴が拡大されており、位置決めの機能が無くなっています。
良品のカバーへの交換をお勧めします。
試乗の際、シフトはストロークが多い感じでした。
操作の重さは十分軽かったので、ペダル側のロッド取り付けを上の段にしてレバー比を変更し、ストロークを減らす方向にしておきます。
下の画像は変更後です。
クラッチケーブルは純正のルートに変更します。
通常はこちらのルートが一番曲がりが少なく、レバー操作が軽くなります。
カバーを取り付けたら、念のためレリーズの遊びを調整しておきます。
これでクラッチレバーは少し軽く、よりスムーズになりました。
次に、フロントを上げてステム周りを点検します。
フォーク下端を前後に揺するとガタが確認できました。
ステムベアリングかフォークインナーとアウター間のガタかのどちらかですが、わずかなガタなので分解点検しないと判別は困難なようです。
フロントを上げると、ブレーキホースが引っ張られた状態になります。
ホースの長さがフォーク伸び切り時を考慮していないようです。
ウイリーした時にホースが引っ張られて破断するので危険です。
バンジョーの向きが少し動かせたので少し下向きにしました。
下の画像は右側を修正した状態です。このあと左側も同様にします。
続いてリヤ周り。ジャッキアップしたホーイルを揺するとガタつきます。
ホイールベアリングのガタかと思いきや、ホイールのカラーが指でクルクル回せることに気が付きました。
アクスルシャフトの緩みと思いトルクチェックしますが締まっています。
アクスルシャフトを外して点検します。
キャリパーサポートには樹脂製のスラストブッシュが入っていました。
透明な樹脂製のワッシャーです。これではトルクが掛かりません。
キャリパーサポートは軸部分まで一体構造でスイングしないタイプです。
これではエキセントリック仕様のチェーン引きの場合、一旦トルクロッドを切り離して調整する必要があり、整備性が極端に悪くなるので不向きです。
外したアクスルを単体で取り付けてみます。
締めきってもスイングアーム縮まらないので、シャフトが長すぎるようです。
ナットを締め付けると奥の段付きで止まる構造です。
ナットを少し短縮してみます。
取り付けると、今度はしっかりとカラーが締まります。
ですが、ネジ部分が6角穴に掛かりそうなので余裕がありません。
ネジを2ミリほどカットします。
再度組付け直して規定トルクを掛けます。
今度はしっかり締まったうえで、ネジ長さも余裕ができました。
再度、試運転に行きます。
スロットルには、開度が目視で確認し易いよう、メモリを振っておきます。
スロージェットを2段階大きくしたので、エアスクリューの調整位置は1回転戻しまで移動しました。スロージェットはもう少し大きい方がよさそうです。
スロットル全開時のバラツキもおさまりました。やはりニードルストッパーがズレていた影響でしょう。
スロージェットをもう1段大きくしたら、本格的なセッティングに移れそうです。