下したエンジンを分解します。
ヘッドカバーを外します。
2番カムキャップのところはカバーの裏側にボルトの痕が付いています。これは過去にボルトが緩んでカムホルダーが浮いて当たった痕です。現状は修理されているようで、4本のボルトの内、1本がM8にサイズアップされています。
カムホルダーのトルクを確認します。半数位のボルトでトルク不足があり、ヘッド側の雌ネジの損傷が進んでいると思われます。全数、ヘリサート加工などの対策が必要でしょう。
1番プラグの雌ネジは、既にヘリサートで修理されています。
この状態でレンチでクランキングします。正逆転でバックラッシュが大きく、逆転時にカムチェーンテンショナーの大きな戻りが確認できます。
バルブクリアランスを確認します。最小は0.04ミリ、概ね.0.08から0.12の間にあります。
カムチェーンテンショナーを外します。プランジャーのスプリングに大きなスプリングワッシャーが入れられています。
このスプリングワッシャーは、スペーサーとしてバネ荷重を増やす目的と思われますが、プランジャーの逆止には効果は無く、テンションアップも不要なことです。テンショナー新品交換で改善できることです。
カムホルダーを外します。1本だけM8ボルトなのが解ります。
ノックピンのひとつは上下で外径が異なるスペシャルでした。既にヘリサートも入っているようです。
ヘッドを外します。
燃焼室は大きな損傷は無さそうです。ヘッドは少し面研されています。
ボアはノーマルのφ69.4ミリでした。
センターのOリングには液体ガスケットが多量に塗られています。
カムチェーンガイドの摩耗は少なめです。腰上は分解歴があるので、その時に交換されたようです。
スタッドのOリングがかなり硬化していることなどから、腰上分解後、10年以上は経っていると思われます。
シリンダー下面を見ます。
シリンダー下面には無数の傷があります。ガスケットを剥がす際に付けたと思われます。
ピストンを外します。
ピストンリングもベタ当たりしておらず摩耗は寿命の半ばほど。前回オーバーホール時にリングも交換され、その後もあまり走っていないようです。
ベースガスケットも社外品で、全面に液体ガスケットが塗られていました。
テンショナー側のガイドです。プランジャーによる凹みがかなり進行しています。
オイルブロックを外します。ここにも不要な液体ガスケットが塗られています。
リヤのエンジンマウント左側です。
エンジンマウントインシュレーターの劣化を放置するとエンジンが後方にズレ、ノーマルのカラーの形状によりこのように削れてきます。
この程度はまだまだ軽症の方です。エンジンマウントインシュレーターは定期交換が必要な部品です。
エンジンカバーを外します。ステーターコイルはきれいですね。
ジェネレーターローターを外します。
クランクのテーパーもきれいです。
右側のカバーも外します。
エンジンを反転します。
オイルパンを外します。
オイル中のスラッジがかなり堆積しています。
オレンジのツブツブは、ジェネレーターローターのマグネットを固定している接着剤の破片で、多くはこのように剥がれ落ちます。
クランクケースを分離します。合わせ面の状態などから、新車から初めての分解のようです。
ミッションは大きな損傷は無さそうです。
クランクを点検します。ベアリングは全てスムーズでガタもありません。
振れは0.08ミリで規定値内です。
Jのクランクとしては点検棒がスムーズに通るので優秀です。
アッパーケースを更に点検します。
クランクのノックピン穴周りは、クラックなど無くいい状態です。
ミッションベアリングの受けは、フレッティングコロ―ジョンの痕もほとんど無く、こちらもいい状態です。
ケース合わせのこの部分もフレッティングコロ―ジョンが良くおきますが、このケースは比較的きれいな状態です。