Z1000R1 K.A様 カムチェーン異音の点検

  

当初から9月1日のツーリングに間に合わせて欲しいとのことでしたので、早速エンジン異音の点検・修理を試みます。

 

音の種類はカムチェーン関係と思われるので、ヘッドカバーを外して内部を点検します。

 

カムプラグは総アルミ製の社外品とのこと。再利用できるのとオイル漏れが発生しずらいのでいいですね。液体ガスケットのはみ出しは無いように組みます。

 

ヘッドカバーを外します。カム周りの干渉や破損などは見られません。

 

プラグを外してレンチでクランキングを正逆回転してみると、以前と同様少し弛みがあるようです。新しく取り付けたS1テンショナーの最大突き出しは約57ミリあります。

 

エンジン側を計測します。カムチェーンガイドまでの深さは約54ミリ、ストロークが足りないのでカムチェーンが躍っていたというわけです。

 

因みに純正カムチェーンテンショナーの最大突き出しは約58ミリあるので、こちらの方が若干長いです。

 

カムチェーントンネル内も特に異常は見られません。

 

カムチェーンは新品と並べて比べるとやや伸びているのが解ります。20リンク長の長さが新品は127.00~127.16ミリに対し限度値が128.9ミリですが、現状は128ミリ位あります。

 

もともと付いていたカムチェーンテンショナーを分解すると、横方向スプリングの奥にボールベアリングが入っていました。バネ荷重を上げようとしたのでしょうか。

 

テンショナーの穴から内部を覗きます。

 

カムチェーンガイドにはロッドが当たるところに深い窪みができています。これもカムチェーンたるみのおおきな原因です。

 

新品のガイドはこちら。内部に鉄芯があり、外側全体はゴムでおおわれています。

 

新品の押し点はこんな感じ。

 

ここをテンショナーのスチール製ロッドで押しています。本来、テンションスプリングは強くする必要は無く、カムチェーンのたるみにロッドを追従して押し出せばいいだけです。設計上ロッドは押しても戻らないワンウェイになっていますが、経年の仕様で滑りがでると戻るカムチェーンテンショナーも存在します。

 

かなめになるロッド2本を新品交換して純正テンショナーを使用することに。

 

組付け時は横のキャップを緩めてバネを開放しておきます。

 

エンジンに組付けます。

 

最後に横のキャップを締めてテンションを掛けます。

 

純正テンショナーの断面図はこちら。無段階でロッドが伸びていく優れた構造ですが、経年の仕様でロッドが戻ってしまうのが欠点です。戻るようなら新品交換を。

 

念のためバルブクリアランスも点検します。全て規定値内でした。

 

カムホルダーの締め付けトルクを確認します。全て規定トルクはかかります。

 

1ヶ所は30°ほど増し締めできてしまうので、16ヵ所全部施工済みというヘリサートが少し浮いてきているのかもしれません。

 

スパークプラグを取り付けます。旧車はレンチでトルク管理が望ましいでしょう。

 

ヘッドカバーのガスケットをきれいに剥がして組付け準備します。

  

アルミのカムプラグは再使用。

 

液体ガスケットを塗布します。エンジン側にも塗るといいでしょう。

 

カムプラグとガスケットをセットします。

 

ヘッドカバーを取り付けます。

 

液体ガスケットのはみ出しは拭き取っておくと見栄えがいいです。

 

キャブを取り付けます。パワーフィルターを取り付けますが、CRキャブは狭い円筒部に抜け止めのリブなどが無いのでしっかり固定するのは困難です。

 

そこで、フィルターの取り付け部がゴム製の場合、シンナーなどで両側ともしっかり脱脂して組むとゴムがグリップして脱落し難くなります。

 

続いてサイレンサーの張り出しをひっこめる修正です。

 

スイングアームに干渉するようで、少し外側に逃がしているそう。

  

サイレンサーを外し、三角のステーをパイプ側に曲げます。

 

取り付けステーも曲がりを少なくします。

 

サイレンサーのねじり角を調整し、スイングアームとのクリアランスを確保しつつ、寄せた位置で固定します。これ以上はマフラーを加工しないと角度は変わりません。

 

クリアランスも大丈夫。

 

ステムのところのメインハーネスは、タイラップでフォーク側に引っ張ってカウルステーとの干渉を防ぎます。

 

ハンドルストッパーですが、過去の転倒の影響か曲がっています。都合よく、これでハンドルロックはかかるそうですが、左右の切れ角が大きく異なり、右は切れ角が極小なので修正します。

 

曲がったストッパーを外します。

 

切れ角が大きくなるように新しくストッパーを取り付けます。このタイプのS1ステムのストッパーは強度が低いので、転倒などで直ぐにダメージを受けるので要注意です。

 

反対側も同様に交換します。

 

これで左右の切れ角は比較的大きめで揃いました。

 

しかし、ハンドルロックはかかりません。もっと切れ角を増やすにはフレーム側のストッパーを削るといいでしょう。

 

続いてリヤブレーキスイッチ。使われているスプリングが長いので、スイッチの調整代がもうありません。

 

バネのフック部分をカットして短くします。

 

これで調整幅の中央付近になりました。

 

フロントカウルステーのネジが渋いのでタップを立てます。この部分、手でねじ込めないと整備性が悪いものです。

 

カウル側も渋いのでダイスで修正します。

 

カウル下にはドライブレコーダーのカメラ。あるとより安心ですね。

 

試運転に向かいます。

 

非常に快適に走行できる車両となりました。フロントフォークのエアも規定値に加圧したので、これで本来のサスペンションの設定となります。ツーリングにも間に合いましたね。

  

エンジンは異音も無くなり、ピックアップも鋭くいい感じです。