バルブタイミングを調整します。先ずは4番ピストン上死点を割り出します。ダイヤルゲージの針の動きを見ながら、だいたい上死点のところをゲージの目盛りのゼロにします。
クランクを少し戻し、正回転でゼロの手前0.1ミリのところでクランク角を読みます。
そのまま正回転して上死点を通り過ぎます。
上死点後の0.1ミリ下がったところで止め、クランク角を読みます。この2つの数値の中央が正確な上死点となります。上死点が解ったところで、角度ゲージのゼロ点をそれに合わせてセットすれば上死点の割り出しが完成です。
続いてエキゾースト側のタイミングを計測します。
カムを最大リフト付近にして測定子をセットします。この時、なるべくカム軸中心付近を計測できるように測定子をセットします。リフターはカムで押されるにつれ、押される位置が移動していくことでシーソーのようにかしげます。端の方で計測するとリフターの傾きによる誤差を大きく拾っいます。それを避けるための措置です。
上死点計測の時と同じように、最大リフトの前後0.1ミリのところで角度ゲージを読み、その中央値をバルブタイミングのロブセンターとします。現在は111.5°でした。
現在のロブセンターである111.5°にクランクを合わせたら、カムスプロケのボルトを緩め、その状態でクランクを目標の108°まで回し、再びボルトを固定します。ボルトはこの状態で届く1本だけを使い、ほかは予め緩めておきます。
再度バルブタイミングを計測します。
調整後の数値は108.5°となりました。目標は108°でしたので0.5°の誤差はOKです。
エキゾーストカムのバルブタイミングはこれで決まったので、ボルトを全部規定トルクで締め付けます。
続いて同様にインテークカムのバルブタイミングを調整します。
こちらは始めの計測値は113.75°でした。
調整後の計測値は106.5°です。目標は106°なのでこちらもこれでOKです。
インテークもスプロケボルトを規定トルクで締め付け、これでバルブタイミングは調整完了です。
1番圧縮上死点でどのようになっているか見てみましょう。
エキゾースト側はスプロケのアジャスト幅のほぼ中央になります。
インテーク側はアジャスト幅のかなり前寄りとなります。
次に、バルブとピストンのクリアランスを確認したいのでヘッドを外します。
ピストンに粘土を盛りつけます。
ヘッドとカムを組んで、クランクを2回転させます。
再びヘッドを外します。粘土が潰れているのが解りますね。
バルブはピストンが上死点付近でも少し開いている工程があり、瞬間的に非常に近づきます。その最も近づいた様子が粘土の隙間として現れます。
見易いように中心線で粘土をカットします。
インテーク側のクリアランスは約1ミリ。ほぼ限界の狭さです。
エキゾースト側は約2ミリ。こちらはやや余裕ありです。
再びヘッドを組み付け、これでようやくエンジンが完成しました。
新しいエンジンを走行テストするため、1000Jレーサーのエンジンと積み替えます。
先ずはエンジンオイルを抜きます。
エンジンを下ろします。
新しいエンジンを台に載せます。
エンジンを大きく傾け、頭の方から倒し込むようにしてフレーム内に入れます。
フレーム内でエンジンを回転させ正立させます。ここでエンジンを持ち上げてオイルラインを所定のルートに通します。
エンジンを固定し、補器類を組み込みます。
エンジンオイルを入れ、始動チェックします。排圧の高いアイドリングで、パワーのありそうな排気音です。