腰下は分解点検の必要があるか、周辺から検証していきます。
油圧クラッチのプレートを外します。使われていたボルトは短すぎていました。
フロントスプロケはオフセットタイプが使われています。純正ロックワッシャーが付けられるよう、穴の一部が拡大されています。
ロックワッシャーを外してボルトを緩めます。
大きな本来必要な大きな平ワッシャーは無く、中心にワッシャーが2枚入って少し飛び出しています。
これによりボルトの軸力は直接スプロケに伝わらず、スプロケは内部で遊んでいたことになります。
スプロケを外します。
スプロケが遊んでいたせいでスプラインはかなり摩耗しています。アウトプットシャフトは交換した方がいいので、腰下も分解することに。
スタータークラッチもたまに飛んで空回りするので分解点検します。
スターターギヤはフリクションがありません。
ローターボルトはトルクがかなり下がっています。
ローターを外します。
ローターを外してみると、スタータークラッチはボルトが緩んでグラグラです。
クランクのテーパーも、空回りしていたようで摩耗してかなりキズが付いています。
テーパーの奥の部分は、バリが出るほど摩耗しています。
グラグラのスタータークラッチを分解してみます。3本のボルトは完全に緩んでいます。
ボルトは叩かれて潰れており、1本は破断していました。
ともに締め付けトルク不足のときの典型的症状です。
オイルクーラーホースを外します。シールテープが巻かれています。本来、このANコネクターにシールテープは不要です。
テーパー部分に巻いてあったシールテープは、ホース内にはみ出しています。オイルラインにも回っていることでしょう。
エンジンを下ろします。
パルシングコイルのプレートは、ネジが固着して緩まないので、ドリルで揉んで外します。
エンジンカバーも外します。
タイミングアドバンサーのノックピンも破断していました。破片は出てこなかったので、このまま組まれていたようです。
ケースを分解するのでエンジンマウントダンパーを外します。
ダンパーはかなり劣化して摩耗しています。
エンジンを反転させます。
オイルパンを外します。堆積しているスラッジは少な目。オイルパンガスケットは社外品だったので、過去に分解洗浄したようです。異物の大半はマグネットローターの固定用ボンドが剥離した物。
ケースを分離します。過去に開けた痕跡は無いので初めて開けるようです。
ミッションのドグは比較的きれいです。
クランクを外します。ノックピンが全て手で外せるので、状態はかなりいいようです。
ノックピン穴のクラックもありません。ケースはグッドコンディションですね。
クランクにジェネレーターローターを差し込んでみます。
テーパー同士が全く食いつかないので、クランクテーパーの摩耗は致命的なようです。
クランクも交換します。
一応、クランクを計測しておきます。
点検棒は通らないので芯ズレしています。
ズレはこの位で、J系ではよくあるレベルです。
曲がりは極少で問題ありませんでした。
カムチェーンは、所々で渋くなっています。外側の摩耗が激しく、そのバリで引っかかるようです。
バルブを外してヘッドを点検します。ガイドのガタは限度値外ですが、それほど大きくはありません。
バルブシートの摩耗も比較的少なめです。
バルブフェースも同様です。
エキゾーストガスケットは、1枚剥がしてもまだその奥にあるようです。
ガスケットは2枚づつ入っていました。
フレームを点検します。
横方向のパイプは、チェーンとスプロケが挟まってかなり潰れています。
右側は直角につながっているのが解ります。
潰れている左側は、大きく下に押されて曲がっています。その上を溶接でかなり盛り上げて補修しているのが解ります。溶け込みが悪いので、あまり補修にはなっていないもよう。
上から見るとこんな感じ。
サイドスタンドブラケットも不審なので、車体を傾けて点検します。
一見、表向きはきれいに補修されている感じ。折れた純正ブラケットを短縮して付け直しているようです。
スタンドの軸はかなりグラグラなので分解点検します。
ボルトと穴径は全く合っていません。
ブラケットの裏側はこんな感じです。こちらも溶接の溶け込みが浅く、強度的にかなり不安な状態です。
これはこのブラケットを切り取って修理した方が良さそうです。
こちらが本来のJ系ノーマルスタンドの様子。フレームパイプとブラケットの接合面は、広範囲に2重になって強度を稼いでいます。
こちらは修理方法の案です。このブラケットはPMC製のZ系用サイドスタンド補修用ブラケットで、これを使ってノーマルスタンドにしてもOK。
他に、弊社で実績のある、脱着式サイドスタンドもお勧めです。素材はZRX250純正品。
取り付け例はこんな感じ。こちらはデモ車Z1Rの物です。
全体的にかなりの不具合がありましたが、今回修復すればかなり良くなることでしょう。