Z1000J1 T.A様 エンジン腰下分解

 

腰下は分解点検の必要があるか、周辺から検証していきます。

 

油圧クラッチのプレートを外します。使われていたボルトは短すぎていました。

フロントスプロケはオフセットタイプが使われています。純正ロックワッシャーが付けられるよう、穴の一部が拡大されています。

 

ロックワッシャーを外してボルトを緩めます。

大きな本来必要な大きな平ワッシャーは無く、中心にワッシャーが2枚入って少し飛び出しています。

これによりボルトの軸力は直接スプロケに伝わらず、スプロケは内部で遊んでいたことになります。

 

スプロケを外します。

 

スプロケが遊んでいたせいでスプラインはかなり摩耗しています。アウトプットシャフトは交換した方がいいので、腰下も分解することに。

 

スタータークラッチもたまに飛んで空回りするので分解点検します。

 

スターターギヤはフリクションがありません。

ローターボルトはトルクがかなり下がっています。

 

ローターを外します。

 

ローターを外してみると、スタータークラッチはボルトが緩んでグラグラです。

クランクのテーパーも、空回りしていたようで摩耗してかなりキズが付いています。

 

テーパーの奥の部分は、バリが出るほど摩耗しています。

 

グラグラのスタータークラッチを分解してみます。3本のボルトは完全に緩んでいます。

 

ボルトは叩かれて潰れており、1本は破断していました。

 

ともに締め付けトルク不足のときの典型的症状です。

 

オイルクーラーホースを外します。シールテープが巻かれています。本来、このANコネクターにシールテープは不要です。

 

テーパー部分に巻いてあったシールテープは、ホース内にはみ出しています。オイルラインにも回っていることでしょう。

 

エンジンを下ろします。

 

パルシングコイルのプレートは、ネジが固着して緩まないので、ドリルで揉んで外します。

 

エンジンカバーも外します。

 

タイミングアドバンサーのノックピンも破断していました。破片は出てこなかったので、このまま組まれていたようです。

 

ケースを分解するのでエンジンマウントダンパーを外します。

 

ダンパーはかなり劣化して摩耗しています。

 

エンジンを反転させます。

 

オイルパンを外します。堆積しているスラッジは少な目。オイルパンガスケットは社外品だったので、過去に分解洗浄したようです。異物の大半はマグネットローターの固定用ボンドが剥離した物。

 

ケースを分離します。過去に開けた痕跡は無いので初めて開けるようです。

 

ミッションのドグは比較的きれいです。

 

クランクを外します。ノックピンが全て手で外せるので、状態はかなりいいようです。

 

ノックピン穴のクラックもありません。ケースはグッドコンディションですね。

 

クランクにジェネレーターローターを差し込んでみます。

 

テーパー同士が全く食いつかないので、クランクテーパーの摩耗は致命的なようです。

クランクも交換します。

 

一応、クランクを計測しておきます。

 

点検棒は通らないので芯ズレしています。

 

ズレはこの位で、J系ではよくあるレベルです。

 

曲がりは極少で問題ありませんでした。

 

カムチェーンは、所々で渋くなっています。外側の摩耗が激しく、そのバリで引っかかるようです。

 

バルブを外してヘッドを点検します。ガイドのガタは限度値外ですが、それほど大きくはありません。

 

バルブシートの摩耗も比較的少なめです。

 

バルブフェースも同様です。

 

エキゾーストガスケットは、1枚剥がしてもまだその奥にあるようです。

 

ガスケットは2枚づつ入っていました。

 

フレームを点検します。

 

横方向のパイプは、チェーンとスプロケが挟まってかなり潰れています。

 

右側は直角につながっているのが解ります。

 

潰れている左側は、大きく下に押されて曲がっています。その上を溶接でかなり盛り上げて補修しているのが解ります。溶け込みが悪いので、あまり補修にはなっていないもよう。

 

上から見るとこんな感じ。

 

サイドスタンドブラケットも不審なので、車体を傾けて点検します。

 

一見、表向きはきれいに補修されている感じ。折れた純正ブラケットを短縮して付け直しているようです。

 

スタンドの軸はかなりグラグラなので分解点検します。

 

ボルトと穴径は全く合っていません。

 

ブラケットの裏側はこんな感じです。こちらも溶接の溶け込みが浅く、強度的にかなり不安な状態です。

 

これはこのブラケットを切り取って修理した方が良さそうです。

 

こちらが本来のJ系ノーマルスタンドの様子。フレームパイプとブラケットの接合面は、広範囲に2重になって強度を稼いでいます。

 

こちらは修理方法の案です。このブラケットはPMC製のZ系用サイドスタンド補修用ブラケットで、これを使ってノーマルスタンドにしてもOK。

 

他に、弊社で実績のある、脱着式サイドスタンドもお勧めです。素材はZRX250純正品。

 

取り付け例はこんな感じ。こちらはデモ車Z1Rの物です。

 

全体的にかなりの不具合がありましたが、今回修復すればかなり良くなることでしょう。