Z1000J1 T.A様 チェック走行

  

個人売買で入手されたとのこと、初めての車種なのでエンジン内部を含め、全体点検のご依頼です。

 

先ずはチェック走行します。いくつか不具合箇所もあるそうで、それも確認します。

エンジンの不調な感じは、アイドリングが低過ぎが原因で、回転が不安定になっていました。アイドル回転を上げてそれは解消。

一通り一般道で確認後、クラッチの滑りもあるそうなので高速道へ。

パワー感も少し少ないそうなのでその辺りもチェックします。

 

エンジンの内部仕様は不明とのこと、とりあえず全域回転はスムーズです。パワー感はノーマルエンジンよりやや遅い感じです。

高回転でシフトした時、クラッチの滑りも確認できました。

 

油温を上げると、ヘッドカバーの左右ともオイル漏れしてきました。

 

リヤショックのダンピングが弱いので確認すると、左右のダイヤル位置はバラバラ。リセットしておきます。

 

不具合も確認できたので、ガレージに戻ります。

 

油圧クラッチのホースは少々短いようです。

 

サイドスタンドは過去にブラケットの根本から折れたのか、切り詰めて付け直してありました。

 

裏側の溶接は、少々心もとない感じです。

 

チェン―下の横フレームは大きく潰れています。過去にフロントスプロケを脱落させてスイングアームピボットとここの間に挟まったのでしょうか。サイドスタンドの修理も含め、最終的にフレーム塗装されて仕上げられています。

 

各部の点検を始めます。

 

外装を外します。

 

タンク内側の前方は、左右ともにフレームとの干渉が多めです。

 

このまま長期間乗るとタンクに穴が開くので対策が必要です。

 

フロントホイールは動きが渋いそう。ブレーキの引きずりが多めです。

 

キャリパーはかなり外側にオフセットして取り付けられています。

 

キャリパーは異径の4ポッドですが、パッドはだいぶ斜めに減ってきているのでそろそろ交換時期でしょう。

 

車両入手時に、フロント周りにダメージの痕跡があったとのこと。左のローターは少し歪んでいます。

 

チェック走行では特に気になりませんでしたが、ローターの振れは約0.4ミリあります。

 

パッドを抜いてホイールを回すと、ベアリングはスムーズに回りますが、ローターとキャリパーが歪んだ部分で干渉します。

 

キャリパー内側にも干渉した痕が付いています。

 

これはシムを入れてオフセットを修正すれば解消できそうです。

 

ブレーキの仕様変更もご検討中とのこと。早めに行なった方がいいでしょう。

 

続いてリヤ周り。

 

スイングアーム垂れ角が大きい車両ですが、チェーンのたるみが少なめです。

 

リヤショックを切ってスイングアームを上げ、チェーンの張りの適正値を求めます。3軸が一直線の時、チェーンのたるみがほぼゼロになるようにします。

 

スイングアームのサス受けは左右でかなり高さが違い、右が2ミリほど低い状態です。リヤショックの全長を調整して合わせます。

 

リヤショックを繋いでジャッキアップした状態がこちら。このたるみがこの車両の適正値です。チェーンを張り過ぎると、アウトプットシャフトやスイングアームピボットのベアリングも破損することがあるので要注意。

 

スイングアーム垂れ角の大きい車両は、チェーンの張りがこの位になることも。

 

チェーンはジョイントのところで渋くなってスプロケの形が残っています。

 

幅を測ってみると他の部分より0.4ミリほど狭いので、つなぐときに寄せ過ぎたのでしょう。これだとOリングが早期に傷むので要注意。

 

エンジンアースのボルトは折れ込んでいます。代わりにアース線はフレームにつなげてありました。

 

短かったクラッチホースは、ルートを変えてフレームの中を通せば余裕ができそうです。